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冬の終り 《君への想い2》

冬の終り 《君への想い2》

 彼が亡くなったのは、高校2年の3学期、珍しく雪の積もった春の日で、僕がそれを知ったのは、翌日の朝のホームルームの時間だった。
 担任の堀川先生は、その日いつになく沈痛な面持ちで教室に入って来た。クラスのみんなは相変わらず、好き勝手に席を移動したり、大声でおしゃべりに夢中になったりしていたが、そんな喧騒の中、昨日見た寂しげな彼の顔が忘れられず、僕は一人席に座り、そのことばかりを考えていた。
 窓越しでの面会、受話器を通しての会話。感染を防ぐために彼は無菌室と呼ばれる、狭いガラス張りの部屋にただ一人きりでベッドに横たわっていた。
「俊一、もう来なくていいから」
「何でそんなこと言うんだよ?」
「だって、来年は受験だし、大変だろう?」
「大変なんかじゃないよ!高志が何を言ったって僕は毎日来るからね!」
 半分泣きそうになりながら言った僕を、彼は寂しそうな笑顔で見つめていた。
 思えば、彼はすでに自分に旅立ちの時が来ていることを知っていたのかもしれない。

「知らせたいことがある」
 まだ本鈴が鳴っていないせいか、取り敢えず話を止めてみんな先生のほうを向いたが、席に戻ろうとする者はなく、先生も無理に席に戻れとは言わなかった。
 静かになった教室の中、なんとなくみんな予感があったのだろうか、先生の次の言葉を待つ。そして、そこで告げられた衝撃の事実。
「狩野高志君が亡くなった」
 ガタンと大きな音を立てたのは僕だった。反射的に立ち上がり、何かを言おうとしたが、急速に眼の前を暗闇に覆われてそのまま意識を手放した。完全に意識を失う直前に、「俊一」と彼の呼ぶ声が聞こえたような気がした。
 葬儀の日は快晴だったが、北風の強い日で、学生服だけでは寒さが浸みた。
 祭壇の前で手を合わせて、彼の冥福を祈りたかったが、僕の心を占めていたのは「君が好きだ」という想いだけだった。
 どうして一人で逝ってしまったのか、僕の気持ちを聞いてくれないまま、なぜ君は逝ってしまったのか。
 この悲しみをどこにぶつければいいのか、僕にはわからなかった。ただ一人、部屋に帰って声を殺して泣くことしかできなかった。
 好きだった。狩野高志がずっと好きだった。けれど好きだと告げることはできなかった。彼との関係が壊れてしまうのが、僕には堪えられなかった。それなら、このままずっと親友でいよう。親友として彼の幸せを願い、恋人ができたら喜んであげよう。大人になって、彼が結婚する時が来たら、僕はちゃんと「おめでとう」と言ってあげよう。
子供が産まれたら、お父さんのお友達として紹介してもらって、時々一緒に遊びに行こう。一緒に彼を見守りながら年を取り、どちらが先に逝ったとしても、いい友達だったと言われるように、僕は親友の役を務めるのだと、心に誓ってきたのに。
 こんなに早く旅立つなんて・・・
 狡いよ、高志。後に残されて、僕はいったいどうすればいいんだ?この気持ちを抱えたまま、どうやって生きて行けばいいんだよ。
 込み上げてくる気持ちを、どこにも持って行くことのできないまま、僕はただただ、泣いた。ずっとずっと、一晩中泣いた。
 もう一度名前を呼んで欲しいと、叶わない願いを呟きながら。

「京応に行きたい?」
 先生、そんな素っ頓狂な声を出さないでよ。
「はい」
「どうして?」
「どうしても」
「ううん…」
 わかってるよ、先生。僕の成績だと無理なんだよね。でも僕勉強するから。ちゃんと勉強して受かって見せるから。だって、京応は高志が行きたがっていた大学なんだ。彼が行けなくなった今、僕が彼の代わりに行ってあげたいんだ。
 彼が歩く筈だったキャンパスを歩き、彼が食べる筈だった学食のカレーを食べて、彼が読む筈だった本を読んであげたい。
 先生、僕は彼が大学でやってみたいっていうこと、全部聞いて知ってるんだ。
 だから、お願い。
「しかしなあ…今のお前の成績じゃあ…」
「知ってます。でも、どうしても京応に行きたいんです。僕、頑張りますから」
「……わかった。一応、希望として聞いておくが、模擬テストの結果では進路変更を考えないといけないし、滑り止めを考えておけよ」
「滑り止めは必要ありません」
「落ちたらどうする?」
「落ちたら次の年に受けます。何年でも受け続けます。合格するまで受け続けます」
「尾形、そんなに考え込まなくても、大学はほかにもたくさんある」
「いえ、京応でないと駄目なんです。僕にとって大学は京応しかありません」
「…………そうか……わかった」
 ありがとう、先生。僕頑張ります。
 高志、僕必ず京応に行くからね。そして、君の代わりに君がしたいと言ってたこと、するからね。だけど、一つだけ、できないことがあるんだ。それだけは許してくれるよね。
 だって、僕は君以外の人と、恋愛することなんて考えられないから。



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