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時を刻むもの

時を刻むもの

それは遠い日の、閉じ込められてしまった記憶。
街の外れ、古ぼけた小さな、かつては骨董屋と呼ばれていた雑貨屋のウィンドウの片隅に、それは置かれていた。すでに店は営むものもなく、ただの街の飾りと化し、そこに飾られている品々もひっそりと、まるで見つかることを畏れているかのように影を潜めていた。
毎日、時には日に何度も通り過ぎて、見飽きた筈のガラス窓を、今夜も意識して見たわけではなかった。 ただ瞳の端に差し込んだ小さな光。無意識に足を止めて振り返る。その視線の先にみつけたもの。
「……時を…刻むもの…?」
唇から零れ落ちた言葉の意味を、そのときはまだ理解することはできなかった。

完全に管理された社会の中で、人々は豊かで安全な生活を送っている。
決められた時間に起きて、決められた時間に食事をする。決められた時間に仕事をして、決められた時間に決められた娯楽を楽しむ。スケジュールは1年ごとに更新され、日常だけではなく、季節ごとに定められたイベントへも、決められた期間参加しなければならない。
しかし、それはあたりまえのことであって、不服を言うものはいない。と言うよりも、不服という言葉や感情すらこの世界には残っていなかった。 数百年前、その星の人々の愚かな考えと欲望から、星の寿命は尽き果てようとしていた。そのことに気づいた数名の科学者と物理学者が、星と生物を救うため、一つのプロジェクトを立ち上げた。
人々は【未来へ旅立つもの】と、そのまま寿命を全うするものに世論調査と称した適性検査で振り分けられ、【未来へ旅立つもの】たちは、地下に密かに造られていたシェルターで長いコールドスリープに入った。

プロジェクトを立ち上げたものたちは、コールドスリープを正常に継続させるため、自ら寿命を全うするものとして残り、数百年を維持できるだけのクローンを造った。それらは一定の期間をおいて、一人ずつ目覚め、元の自分から必要な知識と技術を受け継いでいった。
そうしてその星は、尽きようとしている命を取り戻すために、選ばれた人々とともに長い長い眠りについた。

時を経て、星とともに目覚めた人々が目にしたものは、プロジェクトメンバーのクローンたちが支配する、徹底的に管理された社会だった。
そこでは全てが監視下に置かれ、公私の区別もなく、生殖さえも管理されていた。
恋愛はゲームの一つとされ、娯楽の時間に決められた相手と、ひと時だけのアバンチュールを楽しんだ。
セイヤが目覚めたとき覚えていたものは、自分の名前と年齢だけだった。それ以外の記憶は消えてなくなり、生活を維持していくための知識や情報は、政府が運営する教育機関で、一定期間トレーニングを受けて身に付けた。
彼が覚醒して初めて目にしたものは、銀色の髪に赤い瞳をした同じ年頃の科学者だった。
「……ジュール…」
セイヤの口から無意識に出た言葉だったが、それが意味するものが何なのかは、そのときのセイヤにはわからなかった。
戸惑いと、見知らぬ世界に連れ出された畏怖から萎縮しているセイヤに、銀色の髪の科学者は畏れる必要はないと告げた。その声は、中性的な容姿に似合わず低い張りのあるもので、セイヤの縮こまった心を解きほぐすには充分過ぎる程だった。
3ヶ月のトレーニングを終えて、街に配属されるとき、その科学者はセイヤの耳朶に小さな紅いピアスを付けた。
「セイヤ、これは君を守るためにジュールが作ったものだ。決して体から離さないように」
と、幾度も念を押しながら。この時セイヤは、「ジュール」が人の名前だと知り、その名が銀色の髪の科学者の名前だと、本能で理解した。

街に配属されてすぐに、トレーニングと同じ生活が始まった。
あてがわれた部屋の家具とその配置、引き出しに入っているスプーンの位置まで寸分違わず同じ場所に収納されているため、セイヤは何一つ困ることなく生活を送ることができた。
3ヵ月が過ぎた頃、セイヤは夢を見た。覚醒したときに入っていたカプセルに無理矢理押し込まれる。下から見上げると、銀色の髪と赤い瞳の〈ジュール〉が見下ろしている。セイヤはなぜか泣いていて、彼にカプセルから出してくれるように頼んでいる。その〈ジュール〉の手首に何かキラッと光るものを見つけて、手を伸ばしたところで目が覚めた。
その日、セイヤは共に働いている同僚に夢のことを話した。同僚は「ドクターに相談したほうがいい」と勧めた。眠っている間に見る幻覚(彼はそう言った)は、脳に何らかの異常を来したからなのだと。
納得できなかったセイヤは、結局ドクターには相談せずにいたが、その後も2日に一度くらいの割合で同じ夢を見た。もう一度、あの科学者に会えば何かわかるかと思ったが、そこまでしなければならないほどのことだとも思えず、何よりも、夢に出てくる〈ジュール〉と覚醒したときに会った科学者とは、同じ顔をしているが別人のように思えた。
そんな時に、街角の雑貨屋の店先にあの《時を刻むもの》を見つけたのだった。
それを見つけてからセイヤは、その店の前を通るたびに、ショーウィンドウの片隅にひっそりと飾られている《時を刻むもの》を、意識して見るようになった。
細い、ピンクゴールドの、アーモンド型の鎖を繋いだブレスレットに、それより少し大き目の同じアーモンド型の文字盤。
それは日毎に、セイヤの心に深く入り込み、時々見る夢とともに振り払うことができなくなった。
ある朝、洗面台に取りつけられた鏡に映った顔を見て、セイヤは右耳に着けられたピアスを思い出した。
目覚めたときに、科学者から着けられたものだ。あの時、科学者は〈ジュール〉からだと言った。なぜかセイヤはその時、彼が〈ジュール〉だと思ったが、今では、彼と〈ジュール〉は違うと、漠然と認識していた。
絶対に外すなと言われていたピアスに指で触れると、セイヤは注意深く外した。小さなピアスはセイヤの手の中で、《時を刻むもの》と同じ煌めきを見せた。鮮やかな紅いピアス。その裏側に刻まれた、小さな文字。よく見ると、『永久に』と読める。
「……とわ…に…」
口に出した途端、まるで高く上がる噴水のように、閉じ込められていた記憶がセイヤの心に溢れ出した。

「ジュール!嫌だ!どうして?どうして、僕一人でいかなければならないの?」
「セイヤ、君一人じゃない。私も一緒に行くよ」
「嘘だ!」
「嘘じゃない。ずっと、私は君と一緒だ。永久に、君と生きるよ」
「ジュール!」

鏡の中の、セイヤの頬に涙が伝っている。
セイヤは、全てを理解した。
なぜ、ショーウィンドウの中の《時を刻むもの》に惹かれたのか。なぜ、夢を見たのか。それは全て、愛する人を追い求めるがためだった。
〈ジュール〉はプロジェクトメンバーの科学者の一人だった。
星を、未来を救うために、彼は自ら寿命を全うするものとして残り、セイヤは【未来へ旅立つもの】として、ゴールドスリープに入った。あの《時を刻むもの》はジュールの左の手首に、纏われていたものだった。

セイヤは、緊急時のみ使うことを許されたスィッチを押して、マザーコンピューターにアクセスすると、〈ジュール〉への面会を求めた。許可を得るまでかなりの時間がかかったが、精神的疲労を理由に、なんとか許可を取り付けた。中枢機関に所属する研究所への地図が打ち出され、アクセスコードを取得すると、セイヤは部屋を後にした。
途中、雑貨屋に寄ると、そっとドアを引いてみる。
鍵はかかっておらず、軋んだ音を立てて開く。素早く中に入ると、ウィンドウに飾られていたそれを手に取った。
かつて、時計と呼ばれ、時を刻んでいたものは、今はただの《もの》と化していた。
セイヤは、それを大切に手のひらに包み込み、遥か昔、恋人だった〈ジュール〉の手首に巻きついていた頃の暖かさを感じ取ろうとした。
「……ジュール…」
愛しさに、また涙が零れ落ちる。
「今から行くよ」
呟いて、セイヤは店を出ると、急いで研究所に向かった。

〈ジュール〉と同じ、髪と瞳をした科学者は、セイヤに自分が〈ジュール〉の8人目のクローンであることを話した。セイヤに着けたピアスは〈ジュール〉本人の血液をカプセルに詰めて作ったものだとも話してくれた。
「…なぜ?なぜ、ジュールは僕を一人で旅立たせたんですか?」
「ジュールは、君を愛しているから、新しい世界で幸せになることを望んだのだ」
「僕は…彼と……」
「セイヤ。私には君を愛していた記憶はない。けれど、君が私を求めてきたとき、それに応えるようにデータを受け継いでいる。それで良ければ私は君と愛し合うことができる」
「……違う…それは愛じゃない…」
セイヤは首を横に振った。例え外見は同じで、遺伝子も同じだとしても、彼は〈ジュール〉ではない。
セイヤの愛する〈ジュール〉は数百年前に死んでしまったのだ。これからどうして生きていけと言うのか?
できることなら、自ら死を選んで、彼のもとへ行きたいと願う。そんなセイヤの気持ちを見透かしたように、科学者は言った。
「死を選ぶことはできない。死を選ぶことはジュールを裏切ること。生きて幸せになることが、セイヤ、君に残された唯一の道だ」

生きて幸せになる。

この〈ジュール〉のいない世界で。
セイヤは握り締めた手を開いて《時を刻むもの》を見つめた。しなやかに肌に馴染む冷たい鎖。そこからはもう、〈ジュール〉のぬくもりを感じ取ることはできなかった。
「…これは…?」
セイヤは、それを科学者に差し出しながら訊ねた。
「それをどこで見つけたのだ?」
セイヤは見つけたときの経緯をかいつまんで話した。
「それは君がゴールドスリープに入る前に、ジュールに渡したものだ」
「…僕が?」
「そうだ。君が自身の代わりにとジュールに渡した。君の母親の形見だと言ったそうだ。ジュールはそれを左の手首に嵌めて命の尽きるその時まで、外すことはなかった。ジュールの意志とともに、その時計と彼の血で作ったピアスを私達クローンは受け継いでいった。しかし、5人めのクローンが精神の崩壊を来し、研究所から逃亡した。身柄を確保したときには、時計は左の手首から消えていた。長い間探したが行方はわからなかった。君が見つけるとは、不思議なことがあるものだ」
「…僕が…ジュールに渡した…」
セイヤは、記憶を辿ろうとしたが、確かなものは何も思い出せなかった。
ただひとつ、〈ジュール〉を愛していたという記憶以外は。

セイヤは《時を刻むもの》を、左の手首に嵌めると、一人研究所を後にした。
しかし、あてがわれた部屋には戻らず、街の外れを目指した。
そこは高い塀に閉ざされて、街の外に出ることはできなかった。
出口を探して塀に沿って歩いていると、突然強い光に照らされた。
驚いて振り返ると、機械的な声で停止するように命令される。セイヤは一瞬立ち止まったが、再び塀に沿って歩き出した。2度3度、同じように停止命令を受けたが、セイヤは聞こうとしなかった。そして、5度めの停止命令に逆らったとき、オレンジ色の光がセイヤを貫いた。セイヤはその衝撃で塀に叩きつけられると、ゆっくりと崩れ落ちていった。セイヤが最後に見たものは、左手の《時を刻むもの》の煌めきと、優しく微笑むジュールだった。
「……ジュール…」
手を差し伸べて彼に触れようする。しかし、その手は何にも触れることなく、そのまま地面へと落ちていった。
回収に来た政府のクローンたちは、うっすらと微笑んでいるセイヤをジュールが眠る墓地へと運び、その隣に埋葬した。
セイヤは愛する〈ジュール〉とともに、永久の眠りついた。 END



この物語は、昨年のXmasに開いたBLオフ会のとき、お友達が走り書きしたイラストを見て書いたものです。
彼女はかつて、同人で漫画を描いていた人で、娘の親友のお母さんでもあります。
娘が縁で知り合った貴腐人二人。
できたら彼女とタッグを組んで漫画を描きたいと思っています。
とりあえずは
携帯で書いたので、9000字ほどの、あらすじ的な作品になってしまったものを
肉付けをして、30000字くらいの作品に仕上げたいと思います。

お楽しみいただけるといいのですが(^ ^)

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