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風とともに

風とともに

 翌日、この村にただ1件の雑貨屋に行き、タバコと飲み物を買う。
 そのついでに、何気なく山向こうの病院について訊いてみることにした。
「あの山の向こうに病院があるって聞いたんですけど、どういう病院なんですか?」
「はあ? 山の向こうの病院?」
 畑仕事の片手間に店をやっているのか、農作業用の帽子に長靴姿の中年の女性は、怪訝そうな顔で俺を見る。
「ええ、療養所ですか?」
「ああ、あの病院。もうだいぶんと前に潰れたから忘れたわ。そうそう、十年くらい前までね、精神病院があったんよ」
「……十年前……?」
「そうそう。なんでも院長先生が急に死んで、後継ぎもおらんからゆうことで潰れてしもたんよ」
「では、今は、病院は……?」
「建てもんの半分くらいは残ってるらしいけど、もう荒れ地になってしもうて、今は立ち入り禁止になっとるらしいよ」
 俺は呆けたように口を開けて話をしてくれた女性を見ていた。
 病院はもうない?
 じゃあ、あの女性はいったい誰なのか?
「あ、あの……」
「はい?」
 忙しいのだろうか、迷惑そうな顔をちらっとして俺を見る。
「すみません。この辺に、若い女性はいませんか?」
 唐突な質問にその女性は、誤解したのか眉を寄せて汚いものを見るような目で俺を見た。
「違うんです! 変な意味じゃなくて……。昨日、ちらっと大学生くらいの娘さんを見かけたので……」
「この村には、そんな娘はおらん」
 そう言うと、その女性はさっさと奥へ入っていってしまった。
 店を出て、幸のことを考えながら歩いているうちに、気がつくと彼女と出会った場所に辿り着いていた。
 俯き加減の顔を上げると、目の前に長い黒髪と白いスカートの裾を風に靡かせて立っている幸がいた。
「……君は、誰?……」
 しかし、彼女は答えずに悲しそうな表情を浮かべている。
「君は、どうしてここに来たんだ?」
 幸は顔にかかる長い髪を掻き上げるようして押さえると、澄んだ瞳で俺を見つめた。
「私は……先生に会いに来たんです……」
「なぜ? 僕は君のことを知らないし、君と会ったこともない」
「……そう、こんな私には会ったことないですね。でも……」
 瞼を伏せて眉を寄せ、辛そうな表情で顔を背ける彼女に、俺は胸が締めつけられる。
 ほとんど無意識に幸の傍に寄ると、彼女の頬に触れた。
 彼女は驚いたように目を瞠る。その少し開いた唇に、俺は自分の唇をそっとかさねた。
「なぜだろう? 本当は君と初めて会ったときから、懐かしいような、ずっと前から知っているような気がしていた……」
「……それは……前に会ったことが……」
「いつ? どこで? 今日、村の人に訊いたら、君が話していた病院は10年も前に潰れたと言われた。だったら、君はどこにいて、なぜここにいるんだ?」
 幸は悲しげに目を伏せて、聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟いた。
「それは、先生に会いたいから……」
「だから、どうして俺なんかに会いたいんだ? いったい君と俺はどこで出会ったっていうんだよ?」
「…それは……今は、言えない……」
「じゃあ、いつなら言えるんだ?」
「……明日」
「明日?」
「はい。明日、全てをお話できると思います。それまで待って下さい」
「待てないと言ったら?」
「では今夜、先生の家に行きます」
 一陣の風が吹いて、幸の黒髪と、白いスカートを靡かせた。


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