スポンサーサイト

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Guide
  •  …この記事と同じカテゴリの前後記事へのページナビ
  •  …この記事の前後に投稿された記事へのページナビ
         
風とともに  ←風とともに 【--年--月】の更新記事一覧 →風とともに  風とともに
  • Edit
  • TB(-)|
  • CO(-) 
 
 

風とともに

風とともに

 その夜、幸は淡いブルーのワンピースドレスに身を包み、髪を一つに束ねていた。
 座卓を挟んで向かい合って座る。
 庭の桜が、風が吹くたびに、はらはらと花弁を落としてゆく。
 何から話していいのかわからずに、黙ったまま時間だけが過ぎてゆく。
 訊きたいことはたくさんあるが、なかなか言葉が出てこない。
 思いきって話しかけようとしたとき、幸がぽつりと言った。
「先生は、死ぬつもりなんでしょう」
 喉まで出かかった言葉を思わず飲みこんでしまう。
「……私のせいで、死ぬなんてこと、考えないでください」
「……ど、どうして……?」
「……私は、幸じゃないんです……」
 俯けていた顔をすっと上げて、真っ直ぐに俺を見つめる。
「今先生の前にいるのは、本当の姿じゃないんです」
「……じゃあ……君は、誰なんだ?」
 幸はふっと微笑むと
「僕は、幸平です」
 と、告げた。
「……っ!」
「こうでもしないと、先生は僕と会ってくれないと思ったから、女性の姿を借りたんです」
「……そんな……う、そだ……」
「信じられないですよね」
 幸平と名乗ったその女性は、すっと立ち上がると両手を胸に当てて、祈るように顔を伏せた。そのとたんに、白い光が彼女を包み込む。一瞬姿が見えなくなる。光が消えた後に現れたのは、紛れもない幸平君の姿だった。
「……これは……」
「先生、信じてくれた?」
 声も、話し方も、間違いなく幸平君だ。14歳の姿のままの彼が、俺に優しい微笑みを向けてくれている。
「……幸平君、なんだね?」
「そうだよ、先生」
 胸の奥から熱いものが込み上げて、涙となって溢れだす。
 俺は立ち上がると、衝動の赴くままに彼を強く抱きしめた。
「悪かった……。俺が、俺が、君を殺したんだ!」
「先生、苦しいよ。腕、緩めて……」
「あ、あぁ・ごめん……」


 二人で縁側に座り、散っていく桜を見る。
「先生、僕はずっと先生に憧れていたんだよ」
「…そんなことを言ってもらえる資格なんか俺にはないよ。俺が君を殺してしまったんだ」
「先生は、僕を助けてくれたじゃない。本当は、僕は5歳のあの日、死んでいたんだよ。それを必死で助けてくれたのは先生だった。先生が助けてくれたから、もう10年、僕は生きていろんなことを経験することができたんだ。もし、このまま大人になることができたら、僕は先生のようなお医者さんになろうって思ってた。僕は、先生が大好きなんだよ」
「……でも、手術なんか……」
「同じだったんだよ、先生。手術をしてもしなくても、僕の寿命は終わっていたんだ。それがわからなくて、僕は先生に手術して欲しいってお願いしたから、こんなに先生を苦しめることになってしまって。ごめんなさい。赦して欲しかったのは僕のほうなんだ」
「……幸平君……」
「先生お願いだから、僕のことでもう苦しまないで。僕の手術には失敗したかもしれないけど、でもそれで何かわかったことがあるんじゃないの?」
「……それは、確かにそう……だけど……」
「だったら、死ぬなんてこと考えないで、それを僕と同じ病気で苦しんでる人のために役立ててよ!」
「俺を、赦してくれるのか?」
「先生が、僕の口から赦すっていう言葉を聞きたいんだったら…」
「……赦すと、言ってくれ!」
「先生、赦してあげる」
 俺は彼の前で深く頭を下げた。赦してもらえるとは思っていなかった。それどころか、例え彼の後を追って死んだとしても、会えるかどうかはわからなかった。けれど、今、彼の口から赦すと言ってもらえた。
 これからは、彼のために生きよう。そして、彼が望んだように同じ病気で苦しんでいる子供たちの助けとなれるように努力していこう。
「先生、約束だよ。僕は明日、出発しないといけないけど、先生はちゃんと病院に帰って、先生の責任を果たしてよね」
「出発って、どこへ?」
「天国だよ。心配しないで。天国に行っても、僕は先生のことをちゃんと見てるから」
「……幸平君」
「……先生、もう一回、キスして……」
「えっ?」
「ほら、昨日してくれたじゃないか」
「あ、あれは……」
「先生、好きだよ。僕の先生……」
 唇に、幸平君の柔らかな唇が触れてくるのを感じて、俺は彼をそっと抱きしめた。
 なぜか、彼の小さな体も唇も、とても暖かった。



人気ブログランキングへ
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
ぽちっと愛のクリックを❤
竹の子ロゴ 七夕
関連記事
スポンサーサイト

Guide
  •  …この記事と同じカテゴリの前後記事へのページナビ
  •  …この記事の前後に投稿された記事へのページナビ
         
風とともに  ←風とともに 【2011年06月】の更新記事一覧 →風とともに  風とともに
 

~ Comment ~

  ※コメントの編集用
現在シークレットコメントは受け付けていません。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

MENU anime_down3.gif

同じカテゴリの記事が一覧表示されます
同じタグの記事が一覧表示されます
更新月別の記事が一覧表示されます
キーワードで記事を検索
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。