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風とともに

風とともに

「大谷! 頑張れ! しっかりしろ!」
 大きな声で呼ばれて、ハッと目を覚ます。
 そこは、見覚えのある場所。俺が勤める病院のICUだった。
「……俺は……どうし……」
「大谷! 気がついたか! おおい! 大谷の意識が戻ったぞ!」
 嬉しそうな吉岡の顔が見える。バラバラと集まってきたスタッフは、みんな知ってる奴ばかりだった。
「心配したぞ。よかった、よかったよ! 助かって」
「助かった?」
「お前、発見されたときは心肺停止状態だったんだぞ! もうだめかと思ったが、なんとか蘇生できたんだ。しかし、意識が3日も戻らなくてな。脳波は反応してるのに、一向に目が覚めないからどうしようかと思ったよ」
 説明してくれる吉岡の目に涙が滲んでいる。心から心配してくれたんだと思うと嬉しかった。
 数日後、許可が出て、俺は車いすでの散歩を許されたので、吉岡に押してもらって病院の庭に出た。
「……俺、記憶がないんだけど、どうなってたんだ?」
 意識が戻ってからずっと気になっていたことを訊ねてみる。
「お前が、幸平君のことで落ち込んでいるのは知っていたが、まさか自殺するとは思わなかった。お前が仕事に来なくて家に電話をしたが誰も出ない。不吉な予感がしてお前の家に行くと、お前が風呂場で……。見つけたときはもう、パニックだったよ」
「お前が見つけてくれたのか?」
「ああ、そうだよ」
「ありがとう」
 桜の季節を過ぎて、今はつつじが満開になっている。桜はすでに新緑に覆われて、瑞々しく輝いていた。
「俺、幸平君にあったんだ」
「……?」
「幸平君に、病院に帰って、自分と同じ病気で苦しむ人がいたら、その人たちを治してやってくれと頼まれた」
「……そうか」
「俺はその約束を守らなくてはならないんだ」
 言った途端、幸平君の唇の感覚と華奢な体を思い出す。なぜあのとき、彼の唇も体もあんなに暖かかったのだろう。もし、あの姿が幸平君の魂だったのなら、魂とは人の温もりのように暖かいものなのだろうか?
「幸平君が手術中に亡くなったのは、お前の責任じゃない」
 唐突に吉岡が言う。
「幸平君もそう言ってたよ。寿命だったんだって。手術をしてもしなくても、自分はあの日旅立つ運命だったと」
「そうか……」
「吉岡、お前、信じてないんだろう? 俺の話」
「……いや、信じてるよ。だからお前は帰って来たんだろう?」
「そうだ。俺は、幸平君との約束を守らなければならないんだ」
「彼の思いを無にするなよ」
 吉岡の言葉に、俺は大きく頷いた。
 さあっと、一際強く風が吹く。
 何かが唇に触れたような気がした。
「……幸平君……?」」
 先生が好きだと言った彼の顔が浮かぶ。
 ほろ苦い思いが胸を過った。

                             
 終 
    

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