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MEMORY OF HEART

MEMORY OF HEART

 窓から見えるのは、ちぎった綿菓子を投げ散らかした空だけだった。
 綿菓子はくっついたりちぎれたりを繰り返しながら、遠くへと流されていく。何度、この景色を見てきたのだろう。そのたびに、これできっと最後だと、思春期を迎えたばかりの不安定な心に言い聞かせるようにして過ごしてきた。
 細くて青白い体とは正反対に、伸びきった怠惰な心臓は、大した働きもしないくせに胸の中をずうずうしく占領している。それが悔しくて仕方がなかった。
 倒れてから二年。薬は期待した効果を示してくれない。暑い日も、寒い日も、雨でも風の日でも、通ってきてくれる母親の笑顔に、真也は申し訳なさとともに鬱陶しさを感じていた。口元だけの微笑みなんて欲しくなかった。悲しいなら悲しいと、自分の前で思いっきり泣いて欲しかった。悲しみを浮かべた瞳で、壊れ物に触れるように世話をする母親に、真也はどんな顔をすればいいのかわからかったのだ。だから、母親が部屋にいる間、真也はずっと窓の外を見ているしかなかった。
「もうすぐ、お父さんが来るわ」
 洗濯物をたたみながら、母親が呟く。
「インフォームドコンセント……か」
 入院するたびに行われる定例行事。今までの治療の効果とこれからの治療方針の説明。繰り返し主治医から告げられるのは、薬物療法の効果が思わしくないということだけ。未来へと繋がる道が提示されることはなかった。
「どうせ、同じ話をきくだけだろ? 僕は行かない」
 母親が差し出してくれたプリンの皿を押し退けて、真也は背中を向けた。
「そんなこと言わないで。新しい治療方法があるかもしれないじゃないの」
 期待と不安の入り混じった声が背中に響く。母親は真也を見ていない。顔を背けて、泣きそうな顔で話をしているのだ。
「僕、死ぬんだよね……」
 バカ! という声といっしょに背中に衝撃が走る。
「……ごめん」
 母親を傷つけるつもりなんてない。ただ、これ以上辛い思いをさせたくない。そのためにはどうすればいいんだろう。
 答えはいつまで経っても出てこない。
 今の自分にできるのは、窓の外を見つめることだけだ。役に立たない自分と自分の心臓を、この世から抹消したかった。




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