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SEACRET MIND 2

SEACRET MIND 2


 親和会島津病院は、全床80床の小さな病院である。
 病棟は2階と3階にあり、各40床ずつになっている。4階に手術室がある関係で、一応3階が外科病棟となっているが、入院患者の約3分の2が内科の患者のため4階にも内科の患者が入院している。
 夜間に救急で来る患者もほとんどが急な発熱や下痢嘔吐などで、圧倒的に内科の当直医のほうが忙しい。
 また、内科病棟では、急性期の患者とともに緩和ケアの患者を受け入れているため、夜間呼び出されるのも内科当直医だ。
 特に救急処置室というものは設けておらず、外来診察室でそのまま対応している。
 当直者は外科医1名、内科医1名、病棟看護師が各階2名ずつ、外来看護師が2名と事務当直1名である。検査技師と診療放射線技師はオンコール体制になっていた。
 そんなことを説明しながら、本間は鷹野に病院の中を案内すると、最後に当直室へと案内した。白衣はすでに新しいものが用意されており、夕食も当直室の机の上に用意されている。
当直室は外科と内科別々になっていて、それぞれにシャワールームが備えてある。本間は、自分たちと医師の待遇の違いにいつも苦い思いを抱いていた。

鷹野を当直室に残し、外来へ戻って来ると、さっそく急患がやって来た。
「本間君、山本さんまた発熱ですって。急いでカルテ出して。先生は当直室よね」
 今夜の外来当直看護師の木山が言いながら患者を内科診察室へと連れて行く。
「診察券は?」
「カウンターよ。でも見なくてもわかるでしょ?」
 と意味ありげに木山が笑う。確かに、山本は夜間救急の常連だった。86歳になる山本ユキは、軽度の認知症があり、昼夜逆転しているのか、いつも夜にやってくる。
「山本さん一人?家族は付いてきてないの?だったら家に連絡しないとまた警察沙汰になるよ」
 と本間が木山に言うと
「一人で来たみたいよ。家に電話してあげて」
 と返事が返る。
「わかった。当直は鷹野先生。今日初めてだからよろしく」
「了解」
 本間はすぐに山本ユキの家に電話をする。
「もしもし、山本さんですか?こちら島津病院ですが」
 話を聞くとやはり一人で勝手に出てきたようだ。探しに行こうと思っていたところだと
家族は話した。取り敢えず、病院に来てもらうように言ってから、診察室を覗いてみた。
「もう診察してるの?」
 もう一人の外来看護師の崎田順子に声を掛ける。
「今、問診してるわ。鷹野先生ってカッコいいわね!今日の当直当りだわ。毎週来るの?」
「内科部長の教え子だって。毎週水曜日に当直に来られるそうだ」
「そう。じゃあ私も毎週水曜日に当直入れてもらおうかしら」
 本間は崎田の言葉になぜか不愉快になり、無意識に眉を顰めていた。
「何よ、急に怖い顔をして」
「えっ?」
「急に怖い顔してどうしたのって聞いたの!」
「別に怖い顔なんかしてないよ。受付にいるから何かあったら呼んで」
 本間は急いで診察室を出ようとした。
 そのとき、奥で呼ぶ声が聞こえた。
「すみませんが、本間さんを呼んでいただけませんか?」
「は、はい」
 驚きを隠せないまま鷹野のところへ急いで行く。
「ああ、そこにいらしたんですか。レントゲンを撮りたいのですが、呼び出しをお願いできますか?」
「山本さんのですか?」
「ええ」
「もう少しでご家族が来られますのでそれからでもよろしいですか?」
 山本ユキの家族は、ユキが病院に来るのを快く思っていない。ユキが病院の職員に自分たちの悪口を言いふらしていると思っているのだ。多少そういうことはあるが、ユキが認知症なのは周知の事実だから、たとえ悪口を言ったとしても、誰もまともには受け取らない。しかし、家族にとってはいい気はしないだろう。
 逡巡する看護師と本間を見比べながら
「そうですか。点滴もしたいし、できれば入院させたいと思いますが、それもご家族が来られてからのほうがいいですか?」
 と訊いた。
「山本さん、そんなに悪いのですか?」
 本間は鷹野と崎田を交互に見ながら訊く。
「肺炎を起こしてるようなの」
 崎田が鷹野の代わりに答えた。
「熱も高いし、喘鳴もひどいし、病院に行きたいと言うのを家族はいつものことだと思ったのね。誰も取り合ってくれなかったらしいの。まあ、本人の話だからどこまで本当かわからないんだけど」
 処置室から使用薬剤一覧を持って、木山が診察室に入りながら説明してくれた。
「わかりました。ではすぐに連絡します。入院となると部屋を確保しないといけませんね。病棟に連絡を取って確保してもらいましょう」
「よろしくお願いします」
 鷹野に丁寧に言われて、本間は内心くすぐったい思いを噛み締めていた。


 受付に戻り、今夜待機している放射線技師に連絡を入れる。15分ほどで来れることを確認してから、続いて病棟に連絡する。
「はい。3階大山です」
「医事課の本間です。1名入院になるかも知れないんだけど、ベッド空いてる?」
「男性?女性?」
「女性、86歳で肺炎の疑い。今からレントゲン撮るからもう少しかかるけど」
「女性は無理ね。4階が空いてる筈だから訊いてみて」
「了解」
 受話器をいったん置いて、今度は4階にかけ直す。今夜はたしか裕子が当直だったなと本間は思った。
 尾崎裕子は、今年この病院に就職したばかりの新米看護師で、本間の従妹になる。なかなかのしっかり者で、半年で病棟での仕事を一人でこなす上に、患者からの評判もすこぶるいい。
「はい。4階、尾崎です」
「医事課本間ですが、女性の入院1名入りそうなんだけど、ベッド空いてる?」
「はい、大丈夫です。内科の患者さん?」
「そうなんだ。山本さんだよ。肺炎だって」
 ついつい気安さからため口になってしまうが、夜勤で師長もおらず、電話での会話だからそう気にしなくてもいい。というよりも、この島津病院はこじんまりしているので、スタッフ同士もほとんど全員顔見知りで、仲もいい。忘年会や新年会、夏に行われるビアホールパーティーなど、全員参加の行事のときはみんなが当直を嫌がってなかなか決まらずに、最後はくじ引きという子供じみた方法で決めている。だからと言って当直を引き当てた者は決して文句を言うこともなく、きちんと自分の役割を果たすのだ。まだ、当直のほうが諦めがつくと言ったのは、診療放射線技師の技師長じゃなかっただろうか?「待機に当ると最悪だ。パーティーに来てるのに酒が飲めない」とこの夏零していた。今年の忘年会に鷹野先生は来るんだろうか?と考えている自分に気が付いて、また愕然とした。
「どうしてこんなに気になるんだ?」
 呟くと
「何が気になるんだ?」
 と耳ざとく聞きつけた放射線技師長の赤木に声を掛けられた。
「ああ、赤木さん、早かったですね」
「道が空いてて助かったよ。誰のレントゲンを撮ればいいんだ?」
「内科の患者さんです。鷹野先生が診察室で待ってますから」
「おう、初めての先生だな。かなりできるって佐藤部長がべた褒めだったらしいじゃないか」
「そのようですね。私もさっき佐藤先生のところへ案内したらそう言っておられました」
 ついでに自分も褒められたことをおしえたかったがさすがにそれは言えなかった。
「早く行って下さい。入院の予定なんです」
 と赤木を促して一緒に内科の診察室へと向かった。
「先生、放射線技師の赤木先生です。技師長こちらが今日から着任された鷹野先生です」
「初めまして。内科当直の鷹野です」
「こちらこそ、初めまして。診療放射線技師の赤木です」
「さっそくで申し訳ないんですが、胸部単純を2方向と、胸部CTをプレーンで構いませんので撮っていただけますか?」
「わかりました」
 応えて赤木は車いすに乗って待っていた山本ユキを、木山とともにレントゲン室へと連れて行った。
「撮影が終わったら点滴をしますので、これを準備していただけますか?」
 鷹野は、残った崎田に処方箋を渡しながら言った。
「わかりました。本間さん、病棟はオッケーなの?」
「大丈夫です。4階に頼んでます」
「本間さん、受付で誰か呼んでない?山本さんのご家族じゃないかしら?」
 耳をすませると、「すいませーん」という声が聞こえる。
「ほんとだ」
 と急いで行きかけると
「山本さんのご家族でしたらこちらへ来てもらって下さい」
 と鷹野が言う。
「わかりました」
 と返事をして受付に戻った。
 本間の姿を見つけた山本ユキの家族は、頭を丁寧に下げて
「いつもご迷惑をおかけしてすいません」
 と謝った。
「いいえ。こちらこそお呼びたてして申し訳ありません」
「いえいえ。助かりました。この前みたいに警察沙汰になったら大変ですから」
 品のいい顔を顰めて、困ったものですと溜息をついている。
「内科の先生がお話したいと申してますのでこちらへどうぞ」
 山本ユキの長男の嫁だったか、山本茂子が俯き加減で付いてくる。
「山本さんのご家族です」
 声を掛けながらドアを開ける。
 柔和な笑顔で鷹野がユキの家族を迎え入れると、茂子はさらに恐縮した様子で何度も頭を下げて「すみません」と謝っている。
「こちらへお掛け下さい」
 と崎田が椅子をすすめてようやく茂子は落ち着いたようだ。

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